「睡眠の質」の評価及び向上手法確立の必要性
睡眠は最も重要な休養行動であり、慢性的な睡眠不足だけでなく睡眠充足感(睡眠の質)の不良は、生活習慣病やうつ病等の発病・病状悪化を介して健康を害する要因となることが指摘されております。厚生労働省が健康日本21(第2次)を通し国民の健康増進を推進する中で、2014年に「健康づくりのための睡眠指針」をアップデートしました。この指針では、年齢や生活活動背景(就学・労働形態等)を加味し、生活習慣病や精神疾患の予防的意義を配慮したきめ細かい睡眠健康の在り方を提案しました。しかし、睡眠健康を測る「睡眠の質」の明確な指標は国際的にも示されておりません。
一般的には睡眠健康を示す指標として睡眠時間が用いられていますが、健康維持に必要な睡眠時間には個人差があり、かつ多忙のため日常的に睡眠時間を多く割けない方々の健康を守るための、質的な睡眠評価指標が必要とされております。
本研究の目的は「睡眠の質」を反映し、健康を維持するために役に立つ指標・数値目標を開発することです。
客観性の高い「睡眠の質」指標の候補として、睡眠脳波検査に基づく睡眠深度や睡眠効率等が挙げられますが、睡眠脳波指標と主観的な睡眠充足感にはズレがあることも指摘されています。
また、「睡眠の質」が向上することが、生活習慣病やうつ病等の予防に貢献し、健康増進に役立つことも極めて重要です。
これらの条件をクリアし、適切な「睡眠の質」指標を開発すると同時に、国民の皆様に、誤解無く正しく「睡眠の質」向上のためにできることを伝える方法を工夫し、システムの整備を行うことも重要であると考えております。
我々は本研究成果が、次代の「健康づくりのための睡眠指針」に盛り込まれることを目指して活動しておりますが、それとともに研究の進捗状況を含めて、本ホームページを通しても情報発信できたらと考えております。
皆様のご理解・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
2019年12月
国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部
部長 栗山健一